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『複製された男』とドローン

 カナダのドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品『複製された男』を観た。原作はポルトガルノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴの同名小説。主演のジェイク・ギレンホール、めちゃくちゃな色男である。あらすじは以下の通り。

 何も刺激のない日々に空虚なものを感じている、大学で歴史を教えているアダム・ベル(ジェイク・ギレンホール)。ある日、何げなく映画のDVDを観ていた彼は、劇中に出てくる俳優が自分自身とうり二つであることに驚く。彼がアンソニー・クレア(ジェイク・ギレンホール)という名だと知ったアダムは、さまざまな手を尽くして彼との面会を果たす。顔の作りのみならず、ひげの生やし方や胸にある傷痕までもが同じであることに戦慄(せんりつ)する。

 

映画『複製された男』 - シネマトゥデイ

  90分間箱の中に閉じ込められ、幻覚を見せられているような実験的な映画だった。スクリーンに映し出されるのは黄色く靄のかかった都市とか、俯瞰すると迷路のようなマンションの群れとか、わずかに明かりが漏れ入ってくるだけの暗い室内とかこれだけでも息が詰まりそうになるのに、木管楽器(たぶん)のドローンがずっと鳴り響いているので私の神経は衰弱した。良い意味で衰弱した。鑑賞中、後ろから「ブフォーーーー」と聴こえたので「立体的かつ前衛的な音響だなあ」と思ったらおじさんのいびきだった。
 アダムとアンソニーがどうして瓜二つなのか、観ている間にはほとんど気付けなかった。そう、劇中に明快な答えを示されないタイプのやつ。後でネットで調べて「なるほどな」と唸るしかないタイプのやつ。「この解釈が正しい、間違い」というのはあまり興味ないけれど、説得力のある解釈に沿って思い返してみると、伏線とか小道具とかかなり緻密で面白い。二回目、強くてニューゲーム的な視点で観たいと思える作品だし、二人のヒロインの裸体を存分に眺めたいと思える作品。

複製された男 (ポルトガル文学叢書)

複製された男 (ポルトガル文学叢書)